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神楽坂建築塾 第九期 修了制作 |
空間恐怖ーその紹介と提言 |
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〜精神症状を手掛かりに空間の快適性をさぐる〜 |
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三宅 永 |
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A4論文/16ページ |
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4.現代において可能な、空間恐怖の方にとって快適な空間とは? |
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さて最後に、空間恐怖の方にとって好ましい空間を、現代において実現できないかということを考えてみたい。菅野の家は確かにすばらしい例だが、それと同じ空間を現代の建築の中にそのまま再現することは困難と考えられる。しかし、そのエッセンスを取り入れた空間を作ることは可能ではないだろうか。 そのヒントの一つとして、これもフィールドワークで参加した泉幸甫先生の泰山館があげられる。写真4〜7は、泰山館の1階にある部屋の写真である。
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↑〈写真4:外部に開かれた窓と廊下に開かれた窓〉 〈写真5:4の窓の内側から〉→ |
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この部屋の外部は人通りの多い回廊に面している。通常のガラス窓では、通風のために開けようとしても、プライバシーの面から開けづらいことが予想される。そのためか、この場所には曇りガラスの、開けられない窓があり、採光を確保してある。そして、その上部に、通風のためにジャグジー窓がもうけられている。そのため、ここでは、プライバシーが守られながら十分な採光と通風が得られている。 そして、この部屋の他の壁面には写真5で示されるような、廊下にむかって開かれた窓がある。人が1人通るのに十分なほどの大きさだった。空間恐怖の方にとっては、「いざというときに自分がそこを通って外に出うる窓」というのはとても安心感を持てるものであるが、それが、ここにはつくられている。 |
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なおかつ写真6を見るとわかるように、その窓の障子をあけると、反対側の開口部を見通すことができる。その部分の窓を開ければ、十分な通風が得られることが一目瞭然である。この開放的な感覚は、従来の日本家屋とかなり似通ったものではないだろうか。 |
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さらに、この部屋のドアには、すべて、その上部に開口部がつくられている(写真7)。これは、よく見るとガラスがはめられており、通風は無いわけではあるが、一見するかぎり、そのガラスはあまり意識されず、その心地よい開放性の方が意識されるように思う。随所に見られるこういった工夫が、この泰山館を、非常に心地よい、開放的な空間にしていると思われる。現代の建築でも、こういった工夫を加えていけば、ある程度、従来の日本家屋に近いような開放性を得ることができると考えられる。 |
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〈写真6:窓からの見通し〉〈写真7:ドア上部の開口部〉 |
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もう1つの例として、より簡便に開放性を増す手段についてあげてみたい。前述の泉幸甫先生の建築はかなり開放性に富んだものだが、一般の既存の住宅やオフィスで、そこまで配慮されたものは少ないのではないだろうか? そこで、既存の部屋に対して、筆者が実行した例を示したい。 筆者が勤務するクリニックはプライバシーを重視したせいもあり、診察室に、防音性を考えた写真8のようなドアを用いていた。 問題は、当科の問題である、プライバシーである。待合室の音がわずかに診察室に入ってく る。逆に診察中の方は、自分の声が外にもれることを予想するだろう。最初はその反応が不安だったが、予想に反して、患者さんの側からクレームが出ることはなかった。また客観的にも、診察時の発言が、改装前に比べてよそよそしくなったり、防衛的になったりすることもないように思われる。感想を調査したわけではないが、自ら、診察室の快適性が増したという感想を述べる方もいる。 精神科の診察室といえば、おそらく最高度にプライバシーが重視される空間と思われる。しかし、そこでさえも、来談者は、あまり外に声が洩れることを気にしていない。少なくとも、わが国においては、プライバシーに対する過度の配慮は必要がないのかもしれない。日本には長い間、「菅野の家」のように、音に関してはプライバシーが確保されない建築で生活してきた文化がある。それを踏襲して、プライバシーよりは開放性を重視した空間の方が快適に生活できるのではないだろうか? |
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